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asicro interview 80

更新日:2019.4.5

松田聖子さんのこと

A:松田聖子さんの役ですが、もともと脚本にあったのですか? それとも、彼女のために用意したのですか?

監督「もともとありました。というのも、橋渡しとなるシンガポール在住の日本人が必要だったのです。美樹は真人にとってはソウルメイトで、食について情熱的なやりとりができる相手です。日本人ブロガーという設定にしましたが、私は松田聖子さんの声が好きなんですね。彼女の大ファンなので。過去に母親が書いたマンダリン(中国語)の日記を日本語に訳して読んでくれますが、それを彼女の声で聞きたかったのです」

A:聖子さんはマンダリンもお上手でしたね。

監督「この映画のために勉強してくれました」

H:彼女の出番の撮影は何日くらいだったのですか?

監督「高崎とシンガポールと合わせて18日間で撮影しました。彼女が何日だったかは覚えていませんが、高崎では5日間だったかな。シンガポールが13日間だとすると、彼女は8日間くらいですね。先に高崎で撮影し、シンガポールで撮影中に彼女が合流しました」

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現地フードブロガーの美樹は様々な面で真人をサポートする

(c)Wild Orange Artists/Zhao Wei Films/Comme des Cinemas/Version Originale

H:聖子さんと初めて会った時はどんなでしたか?

監督「とても緊張しました(笑)。彼女と会ったのは昨年で、最初はスカイプで会話をしたんです。脚本を気に入ってくれて、それだけでも嬉しかったのですが、とても礼儀正しく、聡明で、気取らない方だったのでびっくりしました。それから、6月末か7月に東京でお会いしました。ホテルにある誰もいない大きなレストランだったのですが、すごく広くて、それだけでも怖くなりました。ハリウッドでも日本でも、ある意味、撮影形式というのがあると思うんです。私の場合は、その場でなんでもやってしまいますし、予算もあるにはあるけど、それほど大きくはない。つまり、彼女をV.I.P待遇はできないということは、お伝えしていました。お昼も簡単なパック弁当になるかもしれないし。ところが、彼女は『まったく問題ありません』と言ってくれたんです」

H&A:聖子さんの演技はとても自然でしたね。彼女自身みたいな雰囲気でした。

監督「とても自然でした。美樹のキャラクターを彼女なりに自分のものにしていますよね。彼女も美樹のキャラクターをとても気に入ってくれていて、まさに自分の言葉として発してくれていました。斎藤さんも聖子さんという大スターを前にしてかなり緊張していたのですが、彼女のおかげでうまくいったと思います。皆、彼女が大好きでした。真のプロフェッショナルですね」

H:素晴らしいですね。日本ではあまり演技を見る機会がないので。

監督「ここ数年は、コンサートはされているけど、演技はされていませんからね。年齢も超越していて、ほんとうに美しい方です。実は今日もこれから会うんですよ」(と、嬉しそう)

A:映画祭で映画をご覧になった方は、皆、聖子さんがよかったと言ってました。

監督「伝えておきますね」

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出演者が全員集合。スチール撮影は写真家のレスリー・キー

(c)Wild Orange Artists/Zhao Wei Films/Comme des Cinemas/Version Originale

マーク・リーさんのこと

A:叔父のウィーを演じたマーク・リーさんがとてもいい味を出しておられました。彼が出ているとシリアスな場面もちょっと明るくなります。起用されたいきさつを教えてください。

監督「私はマークをとても崇拝しています。マーク・リーはシンガポールが誇る才能ですね。ただ、1つだけ問題がある。ギャラがとても高いんです。だから『ちょっと助けてよ』ともちかけてみました。そしたら『いいよ。投資もしようか?』と。資金はすでに集まっていたので、投資はしてもらいませんでしたが、出演してもらいました(笑)。彼はシンガポールでは最高の俳優ですし、私はすごく好きなんですが、過剰にローカルな笑いもあるので、今回はちょっとトーンを考えないといけない場面もありました。特にヨーロッパでの反応はどうかと心配したのですが、気に入ってもらえました。皆、素晴らしいと言っていました」

A:あの役を演じられて、ご本人はどんな感想を持っておられましたか?

監督「とても楽しんでいましたね。出演したことを誇りに思ってくれています。彼も松田聖子さんの大ファンなので、彼女と初めて会った時は、ほんとうに失神しそうでしたよ(笑)。10代の頃は、部屋中に聖子さんのポスターが貼ってあったそうです(笑)」

ロケ地とそのほかのエピソード

A:高崎を日本での舞台に選ばれたのはなぜですか?

監督「日本のプロデューサーの橘さんと映画について話していた時、真人が育った場所は、大阪みたいな大都市ではなく、小さな町が似合うと思いました。高崎はまさにぴったりでした。それに、私は小さい頃から母と観音様を拝んでいるので、高崎には美しい観音像がありますよね。私にとってはそれも重要だったのです。あの自由の女神に匹敵するような、美しくて巨大な観音像、あれが決め手でした。田園風景も街並みも美しいし、真人の家のような小さい家の風景もしっくりきました」

H:真人の父は寡黙で実直で職人堅気ですが、あれは日本の父親像のイメージでしょうか?

監督「和夫の若い頃はとても活気に満ちています。それはフラッシュバックでわかります。しかし、妻が死んだ時、彼も一緒に死んだのです。彼は生きる意欲を失ってしまった。不幸なことに、彼の息子は妻のことを思い出させるんですね。それで、彼はつい距離を置いてしまう。そこで、別所さんが演じる叔父の明男が真人の父親代わりになりました。和夫がああいう風なのは、傷ついたからなのです」

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シンガポールで母のメイリアンと出会った和夫は生き生きとしている

(c)Wild Orange Artists/Zhao Wei Films/Comme des Cinemas/Version Originale

A:高崎名物のだるまが出てきますが、和夫の店にあっただるまには目が入っていませんでした。でも、最後に真人が出したお店には、お母さんが持っていた片目のだるまに両目が入っていますね。

監督「(嬉しそうに)そうなんです」

A:シンガポールの有名なグルメスポット、ホーカーズのシーンで写真家のレスリー・キーさんが映っていましたが、他にもどなたか顔を出していますか?

監督「彼はこの映画のスチール写真を撮ってくれていました。それから、レスリーと一緒にいた男性は俳優のSHOGENです。(と、スマホで彼の写真を見せてくれる)ちょっとインド人ぽく見えるでしょ。ボリウッドに進出したらいいよと話してるんです(笑)」

 どこかで見た顔だと思ったら、沖縄出身のモデル&俳優でそのルックスを生かして国際的にも活躍している、SHOGENこと尚玄さんでした。(続きを読む)


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profile
エリック・クー
Eric Khoo
邱金海/Khoo Kim Hai


1965年3月27日、シンガポール生まれ。オーストラリアのシティ・アート・インスティテュートで映画製作を学ぶ。多数の短編を監督した後、『Mee Pok Man』(95)で長編デビュー。続く『12 Storeys』(97)『Be With Me』(05)『My Magic』(08)でカンヌ映画祭の常連となる。日本での初公開作品となった『TATSUMI マンガに革命を起こした男』(11)では、劇画創始者の辰巳ヨシヒロの人生と作品をアニメーションで表現している。

映画製作会社 Zhao Wei Films 主宰。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大国際映画祭で作品が上映された初めてのシンガポール人監督。プロデューサーとして、ロイストン・タンやブライアン・ゴートン・タンなど、後進の育成にも積極的に力を注ぐ。斎藤工も含む6カ国の監督が参加したHBOアジアの『Folklore』(18)ではショーランナーを務めた。
filmography
movie
・ミーポック・マン(95)
・12階(97)
・一緒にいて(05)
・私のマジック(08)
TATSUMI
 マンガに革命を起こした男

 (11)
・60 Seconds of Solitude in
 Year Zero(11)
 *オムニバス作品
・Recipe
 *テレビ映画
・部屋のなかで(15)
・セブンレターズ(15)
 *オムニバス作品
・Wanton Mee(16)
 *テレビ映画
家族のレシピ(18)
Folklore(18)
 *HBOアジアの6作品による
  ホラーシリーズ
関連リンク
Zhao Wei Films
斎藤工 公式サイト
松田聖子 公式サイト
HBOチャンネル

TATSUMI マンガに奇跡を起こした男

TATSUMI
マンガに奇跡を起こした男
(DVD)

出演:別所哲也、辰巳ヨシヒロ
(角川書店)


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著:橘 豊(だいわ文庫)
972円(大和書房)


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