崖上のスパイ(悬崖之上/Cliff Walkers)
story
1934年冬、中国・東北部の森林地帯。猛吹雪の中、4人の男女がパラシュートで降り立った。ソ連でスパイとして特殊訓練を受けた中国共産党の工作員たちだ。彼らの目的は、日本軍の秘密施設から脱走したワン・ズーヤン(チェン・ヨンシェン)を満州のハルビンで保護し、無事に逃がすことだ。コードネームはウートラ作戦。
ベテランのチャン・シェンチェン(チャン・イー)とワン・ユー(チン・ハイルー)は夫婦、若手のチュー・リャン(チュー・ヤーウェン)と最年少のシャオラン(リウ・ハオツン)は恋人同士だが、チャンとシャオランが1班、ワン・ユーとチュー・リャンが2班として別行動を取ることになる。満州の特務警察が目を光らせているからだ。
しかし、この計画は捉えられた仲間シェ・ズーロン(レイ・ジアイン)の裏切りで、すでに特務警察のガオ科長(ニー・ダーホン)に察知されていた。チャンは迎えに来た男たちが特務と気づき、射殺。列車で2班と乗り合わせ、ハルビンへ向かう。しかし、列車の中にも特務たちが張り込んでおり、シャオランが疑われるが自力で逃げ切る。
連絡場所は、ハルピンの映画館アジアシネマの前。ガオの腹心で特務のチョウ・イー(ユー・ホーウェイ)やジン・ジーダー(ユー・アイレイ)たちが仲間と偽って2班を迎え、空き家となっている洋館に二人を匿う。その夜、チュー・リャンはワン・ユーから任務のため5年前に子どもを2人置いてきたこと、2人が今はこの街で浮浪児になっていることを聞かされる。チャン・シェンチェンとワン・ユーは、生き残った方が子どもを探すと約束していた。
工作員たちが使う暗号を解読するには、チュー・リャンが持つ本が必要だった。特務たちは1班が本を探しに来るとみて図書館に張り込む。本の持ち出しには成功するが、チャンは追ってきた特務たちに捕まり、ひどい拷問を受ける。隙を見て逃げ出した彼を助けたのはチョウ・イー。二人は旧知の仲で、チョウは特務に潜入していたのだった。
しかし、逃げ切れず死を覚悟したチャンは「俺を利用して生き残ってくれ」と
チョウに願いを託す…。
アジコのおすすめポイント:
1934年の冬、満州国のハルピンを舞台に、降りしきる雪の中で繰り広げられるスパイたちと特務警察の攻防戦を描いたスパイ・サスペンスです。監督は世界の巨匠チャン・イーモウ。スパイ映画を作るのは初挑戦ということですが、武侠映画で培ったアクションとこだわりの映像美学が見事にブレンドされ、そこに監督ならではの家族愛をプラスしてヒューマンなドラマに仕上げています。映像的には、スパイも警察も黒い帽子とコートに統一され、真っ白い雪とのコントラストがスタイリッシュ。2018年の武侠映画『SHADOW/影武者』を彷彿とさせます。
演じるのは多くの作品で活躍する旬な俳優チャン・イー、その妻をチン・ハイルー(フルーツ・チャン監督の『ドリアン・ドリアン』でデビューした少女時代を思うと感慨深い!)。若手スパイは『1950 鋼の第七中隊』のチュー・ヤーウェンと『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』で監督が見出したリウ・ハオツン。一番か弱く見えるリウ・ハオツンですが、これが結構強くて見せ場たっぷり。さすが、スパイ。重要な潜入役を渋い魅力で演じているのは、映画・テレビで活躍するベテランのユー・ホーウェイ。監督が敬愛する高倉健のイメージを重ねているそうです。(*本作の監督インタビューを追記予定)
また、アクション監督として『ベテラン』などで知られる韓国のチョン・ドゥホン、音楽に『別れる決心』などパク・チャヌク作品を手がけるチョ・ヨンウクがクレジットされているところにも注目です。スパイとはいえ敵に計画を知られており、敵の手中にいながら、潜入していた仲間の手引きで二転三転。先の読めないスリリングな展開で、最後まで緊張感が続く本作。結末がわかった上で、再度見直すとより深く味わえます。ぜひ、大きな劇場でご堪能ください。
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