ユィ・シャオチュン、チェン・カイコー監督、安藤政信
|
2009.1.21 ザ・ペニンシュラ東京(日比谷)
京劇界の伝説の大スター、梅蘭芳(メイ・ランファン)の半生を描いた『花の生涯 梅蘭芳』(3月7日より公開予定)。映画のプロモーションのために、チェン・カイコー監督が若き梅蘭芳を演じて話題となった新人俳優ユィ・シャオチュン(余少群)を連れて来日。日本人将校役で参加した安藤政信も交えて、記者会見を開きました。ユィ・シャオチュンは、映画と同じ京劇の扮装で登場。艶やかな美しさに一同うっとり。会見後には、優雅な舞いを披露してくれました。さらに、ゲストで日本を代表する新世代女形スターの早乙女太一も登場し、華やかな記者会見となりました。
監督「2009年がスタートしたばかりのこの時期に、東京へ来て『梅蘭芳』を宣伝することができて、とてもうれしく思います」
ユィ「皆さん、こんにちは。たくさん来ていただいてうれしいです。今日は後で、ちょっとしたサプライズをお届けしますね」
安藤「久しぶりに映画に出演したんですが、チェン・カイコー監督という素晴らしい方の元で芝居ができて、とてもラッキーだと思っています」
Q:今回は実在の偉人の映画化で、膨大な資料を研究されたそうですが、監督ならではの視点からの発見はありましたか? 特に描きたかったところは?
監督「たしかにこの映画は、実在の人物とその物語にもとづいていますが、撮影にあたってはいろんな困難に直面しました。特にどのように描くかについて、たいへん悩みました。梅蘭芳という人物は、中国の京劇界で最も偉大なアーティストの一人です。中国で大きな成功を収めた後、日本でも公演を開き、大成功を収めたと聞いています。1930年、アメリカは経済危機に直面していましたが、ブロードウェイの舞台にも出て、素晴らしい演技を披露しました。1935年には旧ソ連にも行っています。そういう意味で、梅蘭芳は中国の舞台芸術家の中で、初めて世界的な成功をした人なのです。
しかし、私にとっては、梅蘭芳の素晴らしい成果を表現することが映画化の目的ではありませんでした。素晴らしい成功を収めた芸術家は、人生において様々な困難に直面するもの。この辺は映画に描かれていますが、彼はいつも紙でできた枷をしょっていた、そんな描き方を考えました。梅蘭芳先生は私生活では大変穏やかな方で、君子のような性格でしたが、内心世界には強い芯があり、とても強い信念を持った方でした。世界に対しては、常に穏やかな抵抗者という側面を持っていました。
歌芸においては、日本の文化の中でも、彼の精神世界を受け入れることができると思います。彼は人生の中で成功と失敗をいろいろ経験し、最も成功した時に、人生は『空』そのものと悟りました。それまでは、観客から何かを求めようとしていたのが、今度は観客に何かを与えようとした。そのためには、自分の愛情を犠牲にしても惜しくはなかったのです。戦争中は、命を惜しまずに戦いました。そういう人生を描きたいと思いました。
ユィ・シャオチュンを見て、ときどき自分に問いかけました。梅蘭芳先生は男だったのか?女だったのか?英雄だったのか?普通の人間だったのか?と。
|
|
最後にちょっとしたエピソードをお話しましょう。梅蘭芳先生は日本を3度訪問していますが、初めて訪れたのは1919年でした。帝国劇場で公演をした夜に体調を崩し、日本のお医者さんに診てもらいました。その時、そのお医者さんが梅蘭芳先生の瑠璃玉でできたカフスを見てとても気に入られたので、先生は『本物を差し上げましょう』と約束しました。その約束が実現したのは、なんと30年後でした。1956年の3度目の来日の時だったのですが、日本のお医者さんはすでに亡くなっておられました。そこで梅蘭芳先生は、カフスを遺影の前に置いてご挨拶をしたそうです。そういう人物なんです」
Q:ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選ばれましたが、ご感想は?
監督「カンヌへは何度か行っていますが、ベルリンに参加するのは今回が初めてです。審査員はやったことがあるのですが、作品として参加するのは初めてなんです。とてもうれしく思っていますし、プレッシャーは感じていません。まったく違った文化や言語を持つ他の国の映画関係者や西洋の観客の皆さんに対して、我々からの作品を披露し、この作品を通じて、西洋の皆さんが共感や喜びを感じてくださるかもしれない。それをどのように分け合おうかと、そういう気持ちで臨んでいます。実は、このようなスタンスは、梅蘭芳先生から学びました」
ユィ「こんなに素晴らしい映画に出演できたこと、その中で偉大な芸術家を演じることができたこと、それだけで充分に満足です。もちろん、ベルリン国際映画祭に参加できるのはいいことですから、いいニュースを期待したいと思います」
安藤「チェン・カイコー監督からは、視覚的にも、空間作りについても、映画というのは芸術なんだなということをすごく感じさせられました。監督の素晴らしい美意識に触れられたのは、役者としてとても幸せに思います。また、ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選ばれたことについてはとてもうれしいし、その映画に参加できたことを誇りに思います」
Q:女形を演じるにあたって、難しかったところは?
ユィ「僕が演じたのは、少年から青年にかけての若い梅蘭芳です。実は梅蘭芳さんは、あまり幸せな成長期を送っておられないのですが、そのような過程だったということ。役者としても、人格形成の上で一番大事な時期だったということ。それらが見事に表現されていましたので、その点に注意して演じました」
(続きを読む)
続きを読む P1 > P2 ▼ユィ・シャオチュン ▼舞台挨拶 ▼作品紹介
|