韓国トップ女優となったチョン・ドヨン
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衝撃作『ハウスメイド』の
裏側にせまる
−チョン・ドヨン(俳優)
8月27日より公開中の『ハウスメイド』。鬼才キム・ギヨン監督の1960年の名作『下女』のリメイクとして話題となり、イム・サンス監督の独自の美学と解釈で生まれ変わった本作は、衝撃的な問題作として深い余韻を残します。
今やすっかり演技派女優となったチョン・ドヨンは、本作でも体当たりの演技を見せ、一人の女の持つ多面的な顔を体現しています。その演技の裏には、様々な葛藤や悩み、挑戦があった模様。
主演女優のチョン・ドヨンが日本公開を前に、韓国でインタビューに応じました。このインタビューでは、『ハウスメイド』出演での苦労話やエピソードの中から、強さと弱さを合わせ持つ女優チョン・ドヨンの素顔、そして女優魂を垣間見ることができます。
●イム・サンス監督について
Q:イム・サンス監督の仕事を受けていかがでしたか?
チョン「この作品を引き受けるのは、容易な選択ではありませんでした。オリジナル(キム・ギヨン監督の『下女』)が非常に高く評価されている作品であるということで、それを超えることができるのか不安でした。でも、イム・サンス監督が引き受けられると聞き、オリジナルのプレッシャーを乗り越えて、それ以上を目指せる監督はこの人しかいないと思ったので、出演を決めました。
監督からはオリジナルを参考にしろといったお話はなかったので、私もオリジナルを気にしないようにしながら撮影に臨みました。特に主人公のメイドは、オリジナルでは元々狂気に満ちたというか、常軌を逸したキャラクターでしたが、今回私が演じるウニは、身近によくいそうないたって普通の女性でしたから、出来上がった作品も、トーンや設定は似ていると思いますが、別のものとしてお楽しみいただけると思います」
Q:イム・サンス監督の演出はいかがでしたか?
チョン「実は撮影中は、なぜイム・サンス監督の作品に出演しちゃったのかと何度も後悔しました(笑)。即興的な演出も多くて、シナリオ通りではなく、現場で監督が思いついたことに対応することが多くて、大変でした。たとえば、主人のフンがピアノを弾いている部屋に食事を運ぶシーンがあるのですが、運んだあと部屋から出てくる際に、踊りながら出てきてみろとか…すごく憎たらしいのに、監督の言うことを聞いているうちに納得させられてしまって、いつの間にか従うことになる。その繰り返しでした。なので、監督のあだ名を『蛇(ペム)・サンス』とつけました。蛇の彼が私をどう料理し、私から何をどうやって引き出したかはよくわかりませんが、それほど悪くはなかったです」
●メイドのウニという役柄
Q:今回演じたメイドのウニという役について教えて下さい。
チョン「シナリオを読んだ際には、ウニというキャラクターはご覧になる方々が『あの女は一体どういう女なのよ。理解できない』と思うような女性だと感じていましたので、最初は、彼女を演じること自体がプレッシャーでした。裕福な家にメイドとして入り、そこの主人と不倫をして…まるで自分とは別世界の話のように感じました。
メイドの仕事は真面目にこなし、子供もかわいがり、一見、穏やかな女性のようだけど、主人を受け入れるところを見ると挑発的だし危険そう…それでまた仕事に戻ると、クールに、私はメイドだからって自分の仕事をこなす…。人の行動はある程度予想できるものですが、ウニはそんな予想からは外れたことをするタイプです。何とも表現しがたい、理解しがたい女性だと思いました。だから、演じている間は常に自分を疑ってかかりました。
そんな風に悩みながらも、私を信頼してくれる監督を信じてウニを理解しようと努力していたある時、ふっと『私はウニかもしれない』という感覚が得られたんです。感覚的なものなので、説明が難しいのですが…今でも、私は彼女について完全に、すべて理解できているのかどうかはわかりません(苦笑)。でも、『私の中にウニと重なる部分がある』と感じられたことでとても楽な気持ちになりました。
私はある人に『あなたはクァン(狂・光)女だ』と言われたことがあります。私の中には『光』と『狂』が共存していると言うのです。ウニもそんな存在だと思うので、そんな部分がその感覚に至らせてくれたのかもしれませんね。
撮影現場では、ある日はドラマでぶったりぶたれたり、ある日はアクションでワイヤーを使ったり、ある日はエロスでベッドシーンがあったりと、ウニという役どころは1日1日があまりにもダイナミック。1人で何役もこなしているかのように肉体的に疲弊しましたし、精神的にもすごく苦しみながら演じましたが、演じれば演じるほど面白くなっていって…女優としてこんな風に難しいことに挑める時間が持てたことは、とても幸せなことでした」
Q:今回のメイドの衣裳についてはいかがでしたか?
チョン「スカートとブラウス1着、それからワンピース1着。ツーピース1着の計3着をメイド服として着ていたのですが、こんなメイド服を思いついたことに驚きました。一体どんな映画を作りたくて、メイド服をこんな風に作ったんだろうと(笑)」
●共演者たち
Q:邸宅の女主人役を演じたソウについてお話し下さい。
チョン「あどけなくて幼い感じに見える時もあれば、私よりも大人っぽく見える時もある。魅力的な俳優だと思いました。好奇心旺盛で、情熱を持って取り組んでいました。いい俳優は、自分だけうまく、きれいに演じる人ではなく、周りと息を合わせられる人です。彼女は、まだ若いのに周りと息を合わせながら演じる人でした」
Q:先輩のメイドを演じたユン・ヨジョンについてお話し下さい。
チョン「初めはすごく緊張しました。恐ろしかったんです(笑)きちんとしていて怖い人というイメージがあったので、ドキドキしました。でも撮影に入ると、ユン・ヨジョン先生は本当に可愛らしいキャラクターの方で、愛すべき方でした。こんなことを言ったら叱られるけど、先生(ヨジョン先輩)を見てるとついからかいたくなるんです。
こういう言い方をしたら失礼かもしれませんが、先生は私の演技をちゃんと受け止めて下さるので、一緒に芝居をする時もすごくリラックスできました。彼女のおかげでウニのキャラクターが、より明確になったように思います。これまでは年を重ね、どうなりたいかと考えたことはなかったのですが、ユン・ヨジョン先生を見ながら、年を重ねたら、あのような姿と姿勢、情熱を持っていたいなと感じました。すごく尊敬できる先輩です」
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