香港アクション映画界の新たな旗手ダンテ・ラム監督
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『ブラッド・ウェポン』
は逆境と戦う映画
−ダンテ・ラム(監督)
次世代の香港アクション映画界を担うダンテ・ラム監督による、大型巨編アクション『ブラッド・ウェポン』(原題『逆戦』)。主演にニコラス・ツェー、ジェイ・チョウと中華圏の2大人気若手スターを迎え、ヨルダンやマレーシアを舞台に大規模なロケーションを行った大作です。昨年1月の公開時には、香港でNo.1ヒットを記録。ニコラスやジェイの新たな魅力をも発掘し、ダンテ・ラム監督自身も極めて困難な撮影を経て大きく前進したようです。今回は、現地取材の映像から翻訳された興味深いオフィシャル・インタビューを入手しましたので、ご紹介します。
●『ブラッド・ウェポン』について
ダンテ・ラム監督「私の作品『ビースト・ストーカー/証人』や『密告・者』では、登場人物の状況や生活が逆境だらけなんだ。我々は逆戦を避けられるだろうか? いや、避けられない。毎回、逆境に直面する限り、戦わなければならない。今回はこのコンセプトにふさわしいストーリーを作ることができて、うれしく思っているよ」
●ヨルダン・ロケについて
監督「何ができるかを探るため、製作会社に2度コンタクトを取った。中東をリサーチしたんだけど、ヨルダンはとても自由でとても文明化しているんだ。ほとんどの住宅が山を背に建てられていて、すごく密集して見える。たくさんの道が、その地域を縫うように走っているというのが、ヨルダンの町並みの特徴だ。
キャラバンが町を通るシーンがあるんだけど、危険が迫っている雰囲気を作り出すために、空から撮影したんだ。角を曲がるたびに、奇襲されたり、殺し屋がいないかと想像したよ。急斜面や崖が多い地形、半壊した建物たちが、まるで廃墟のような演出感を創ってくれる。とても密集した住宅地があるんだけど、こんな大きな町でこれほどの大スタントはめったに見られないと思うよ」
●マレーシア・ロケについて
監督「マレーシアをロケ地に選ぶことへの不安は、天候が予測できないこと。雨が多いのは知っていたんだけど、毎日午後3時になると雨雲が集まってきて、雨が降り出すんだ。雨になると半日しか撮影できないから、毎日がプレッシャーだった。運がいい時は雨が止んで、撮影が再開できたので感謝したけどね。それ以外は、大きな問題はなかった。マレーシアでの撮影は最高だったよ。コーズウェイベイのように人通りが多い地域で、道全体を貸しきったりもして、大型ショッピングモールも使ったし、そんなところで撮影できるなんて驚いたよ」
●ジェイ・チョウについて
本格的な銃器を指導されるジェイ
スタントなしで飛び下りるニコラス
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監督「過去の出演作品を観たけど、彼自身に近いキャラクターを演じているように感じた。もっと男らしい役も、激しい演技もできると思ったから、今作ではそういうシーンを増やしたんだ。彼のファンが喜ぶかどうかはわからないけどね。ジェイはこの映画の中で真の「男」を見せてくれたと思っているよ」
●ニコラス・ツェーについて
監督「彼が演じるヨウは、感情や愛からは程遠い犯罪者だ。でも一度それらに触れると、すぐに思い出す。そんな、心が衰弱してしまったキャラクターにしたかった。
いい演技には、本物の感情を必要とするものだ。あるシーンでニコラスは、撮影が終わっても演技をやめなかった。こういう演技こそが、観客の心に響くと思う。今作ではアクションもたくさんこなさなければならなかったけど、感情を表現するシーンのほうが、きっと大変だったに違いない。ニコラス自身は本当の感情を見せないタイプだから、映画の中で感情を放出する時に、さらに強い激しさが生まれるのかもしれないね。撮影中は、セットにいる誰もがニコラスの演技に感動したよ」
●アクション映画で大切なこと
監督「テンポを第一に考えた映画を作りたいと思っていたから、アクション映画を選んだんだ。アクションと言っても、その意味は広いからね。パンチやキックだけではなく、銃撃戦や爆破だけでもない。私の映画の80%はいつもアクションシーンだが、全てのショットで銃やら戦いやら爆破を使えるわけではない。だから「動き」と「テンポ」にこだわった。映画の20%を占める非アクションシーンで、観ている人は落ち着くことができるんじゃないかな。でも、アクションシーンには感情も存分に盛り込まれている。例えば、戦闘のシーンがあったとして、その戦いのプロセスが、映画のストーリーや人間関係に突然変化を生んでいく。その要素を、アクションではないシーンで使うんだ」
(香港のインタビュー映像より構成 素材提供:角川映画)
(c)2012 Emperor Motion Picture Limited.
▲ダンテ・ラム監督 ▼ニコラス・ツェー ▼ジェイ・チョウ ▼作品紹介
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