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asicro interview 49

更新日:2013.7.3

●国際的なキャストやスタッフと仕事をするコツ

Q:記者会見で、安藤政信さんを起用する時に時間がかかったとおっしゃっていましたが、安藤さん自身に何かひっかかることがあったのでしょうか?

 監督「安藤さんとのコミュニケーションは、脚本段階から始まりました。彼もこれから演じる役柄について、自分で歴史的な資料をいろいろと調べましたが、その人物の評価はあまり高くなかったのです。どちらかというと、あまりいい人ではない。日本人として外国へ行って、批判されるような日本人の役をやると、帰国した後が心配になりますよね。だから、この役のことをよく理解して、知ることができれば、うまくいくと思ったようです。特に、この映画が日本で公開される時には、悪口を言われないようにしたいですから。そういう意味で、すごく時間をかけてコミュニケーションを取りました」

Q:日本人のスタッフやキャストは、現場ではどんな雰囲気でしたか? どういうモチベーションで作っていかれたのでしょうか?

 監督「現場にはいろんな国の人が入って来ました。そうすると、とても混乱します。正直、とても疲れます。通訳だけでも10何人いて、どのクルーにも1人か2人付いていました。そうすると、全員が優秀な通訳ではないので、間違いもあるんですね。たとえば、大が小に訳して、小が大に訳すると、それだけでも大混乱ですよね。最初の頃は、誤訳でコミュニケーションがうまく取れませんでした。いくら話しても通じないんです。なんでこんなに矛盾しているんだと。そういうこともありました。

 先ほど、霧社事件の脚本を書いたら、自分の心が寛くなったと言いましたよね。(記者笑)皆、よく言うんです。なんでこの映画の中には、セデック語や日本語や福健語が出て来るのか。皆がわかるような、1つの国際言語でやればいいんじゃないかと。通訳の問題を経験して、それがよくわかりました。やはり言葉は大事です。言葉は衝突の第一の問題になるかもしれません(笑)。でも、考えてみたら、まあそんなものかなと、あまり気にしないことにしました(笑)。

 こういう国籍の違う役者やスタッフをどうやって束ねていくかというと、やはり大事なのは、まず相手の職業でプロとして持っているものを尊重すること。同時に、自分自身のプロとしての部分も見せます。そうすると、お互いに尊重しあうことができるのです」

●次回作『KANO』の撮影現場で

Q:次回作『KANO』には大沢たかおさんが出ていると聞いていますが、日本人と仕事をする時に感じるやり方の違いや印象に残ることがあれば教えてください。

 監督「『KANO』での大沢さんは、主役というよりも友情出演で、八田(台湾でダムを建設した八田與一)さんの役をやります。主役は永瀬正敏さんが演じるトレーナーです。大沢さんとのコミュニケーションは、芝居が少ないのでわりとやりやすかった。4日間、集中してやりました。彼もいろんなことを提案してくれました。

 日本人には、仕事をする時と演技をする時のやり方に、一定の差があることに気づきました。日本人のスタッフチームと一緒に仕事をすると、ものすごく細かいことを全部決められてしまいます。1は1。2は2。何時から始まる、何をやる、と全部決まっているのです。でも、日本の役者は逆。演技をする時はアドリブが好きなようです。日本の役者さんはコミュニケーションをとることに、わりとこだわりがあるんですね。単なる演技者でなく、クリエイターとして何か新たなものを創作することに熱心。そこはとても特別ですね。

 そういう考え方は、映画の視野を広げてくれたりと、時として素晴らしいものを持っていますが、監督は心臓を強くしていないといけません。それを受け入れて、考えて、よし、変えようと。これは要る、これは要らないと、監督は瞬時に判断しなくてはなりません。でも、そうすると現場は大変なんです(笑)。これは、おそらく国籍とは関係なく、役者一人一人の好みなのかもしれませんが(笑)」

●時間をかけた宣伝戦略と各国の反応

Q:台湾での公開時の感想や反応、中国や欧米での理解の仕方や反応の違いを教えてください。

 監督「あまり差はありません。大同小異ですね。台湾では今回の日本と同じように完全版、上下の2部構成で公開しました。前編を観て後編を観ない人はいませんし、どちらか1本だけを観るということは滅多にありませんから、両方合わせると4時間半になる。そこで、どうやって観客を映画館に引き付けるか、我々は1〜2年をかけて宣伝しました。

 その宣伝方法というのは、実は映画の撮影段階から始めていて、観客に予防注射をしていきました。今こういう映画を撮っているけど、完成できないかもしれない。いや、完成しそうだ。映画はすごく長いけど、退屈しない、見応えのある素晴らしい映画になりそうだ、と少しずつ刷り込みをしました。メジャー系の映画ではありませんが、メジャー映画がとるパッケージ手法を導入して、強気で宣伝したのです。台湾で公開する時は、これが流行なんだとなるように。そして、3日間の公開で1億元の台湾ボックス成績という記録を作りました。

 予防注射をして、強力な宣伝攻勢をかけたことで、公開された時にはすでに観客は心の準備ができていました。ああ、こういう映画だ、メジャー系の映画ではないけど、テーマは重いけれども、観客の価値観に挑戦する映画だと。観客の皆さんには意外と受け入れてもらえました。もちろん100%ではないけど、8割の観客は楽しんで観てくれました。

 半分以上の観客、特に原住民の皆さんは映画にすっかり入り込んでしまい、自分たちのルーツがどこにあるのかを探し始めました。自分の父はヒーローだったかもしれない、自分の祖父は何かいいことをやったかもしれないと。そういう事はわりと記録に残っているのです。多くの皆さんは、映画の中の物語がどうのこうのではなく、自分のルーツを探し求めるようになりました。

 中国以外、香港やアメリカ、ヨーロッパでも上映されました。国際版(154分の編集バージョン)でしたが、8割か9割は映画を評価してくれました」(次頁へ続く)


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『セデック・バレ』関連作品

『セデック・バレ』OST

『セデック・バレ』OST
台湾盤2枚組CD

音楽を担当したのはシンガポール出身のリッキー・ホー。
原住民キャストが合唱する
感動的な「看見採虹」など
3曲を含む全27曲を収録。
金馬奨オリジナル音楽賞受賞

フォトブック

『セデック・バレ』写真集
「本色・巴莱」

勇猛なキャストたちの姿を
収めた写真集

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監督日記「導演・巴莱」
(中国語)

撮影中の喜怒哀楽を綴った
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