久しぶりに映画作品でプロモーション来日したイ・ビョンホン
2013.1.29 ザ・ペニンシュラ東京
2月16日より全国で絶賛公開中の超話題作『王になった男』。王と影武者の二役を演じた主演のイ・ビョンホンが、1月末、久々に映画のプロモーションで来日。記者会見とプレミア試写会の舞台挨拶、さらに大ヒット祈願の押印式イベントが開催されましたので、まとめてご紹介します。まずは、記者会見。大物韓流スターが来日するのは久しぶりとあって、会場は入りきらないほどたくさんの記者で溢れかえっていました。また、BSジャパンの韓流番組レポーターも駆けつけており、愉快で賑やかな記者会見となりました。
ビョンホン「来日するのは久しぶりです。映画作品でこのように記者会見をするのも、とても久しぶりなので、うれしくて胸がときめいています」
司会「初めての時代劇、しかも一人二役でかなりの挑戦だったのではないですか?」
ビョンホン「時代劇も、王の役を演じるのも、まったく初めてでしたが、これまで時代劇を避けていたわけではなく、またこの作品が時代劇だから挑戦しようと思ったのでもありません。とにかく、物語がとても素晴らしく、楽しい作品だと思えたので出演を決めました。とても楽しく撮影できましたし、新しい経験ができ、多くのことを学びました」
Q:韓国では歴代3位の成績を収めましたが、その要因は何だと思いますか? また、日本の観客に観て欲しいところは?
ビョンホン「イ・ビョンホンが出演しているからでしょう(笑)」と、すかさずジョーク。日本語で「冗談デス(笑)」と続けた後で、
ビョンホン「この作品は歴史的事実を元にしています。実際に王の日記を見ると、映画で描かれている15日間は空白になっているのです。そこからヒントを得て、それをモチーフに、じゃあその空白の15日間にこういうことが起きたらどうだろう?と、フィクションを加味して作られました。その点に、まず関心を持たれたのだと思います。
さらに、当時の賤民であるハソンはどん底の生活をしていたわけですが、劇中で王様の真似をすることになります。王様に対しては、時代や国を問わず、どんな人たちも鬱憤や不満、悲しみを持っているでしょう。それをこの映画が代わりに吐露し、正してくれたので、大きな満足が得られたのだと思います。とても痛快で、楽しくご覧になった方が多かったのでしょう。
日本の皆さんへは、見どころというよりも、もし自分が王様だったらと考えてご覧になると面白いかと思います。それに、とても痛快な気分が味わえる作品です。時代や事実、歴史的根拠を知らなくても、韓国の習慣や文化を知らなくても、気軽に楽しくご覧になれます。先日、アメリカのLAでプレミア上映がありましたが、非常に遠いアメリカでも、またイギリスでも、楽しんで観てくださっていましたから」
Q:現場を引っ張って行く主演俳優と王様には、共通点はあるでしょうか?
ビョンホン「表面的には似ているところがありますね。いつも周りの視線が一身に集まるし、それによって、制限された生活をしなければならない。権力を持っていても乱用してはいけないとか、似ているところはたくさんあります。また仮に、自分が何かを命令したとして、それは叶うかもしれないけれど、必ずその責任はとらなくてはならないというところも似ています。
責任感という部分では似ていますが、俳優としては違う部分もあります。王は民の声に耳を傾け、民が求めていることをやっていきますが、俳優は、ずっと最初から最後までファンの好みだけに合せてしまうと、演技の面で自分のカラーをなくしてしまいます。作品を選ぶ時には、自分の意志で選択すべきです。もちろん、ファンの声にも耳は傾けますが、あまりにも傾け過ぎてしまうと、自分のカラーや初心、考えを見失ってしまう。そこが違いますね」
ここで、BSジャパン「韓流ファクトリー」の韓国レポーターを務めている元アイドル、藤原倫己さんから、愛に溢れた面白質問が飛び出しました。
藤原「ヒョン!アンニョンハセヨ…ノム・ポゴシポッソヨ!(とても会いたかったです!)」
ビョンホン「オー! すみません、気づきませんでした(笑)」
藤原「作品を観ましたが、最高でした。映画ではコミカルな舞踊のシーンがありましたが、大変だったのではありませんか? また、ハソンは清らかな性格で、素敵な笑顔で民衆に近づいていきますし、ビョンホンさんも後輩にいい笑顔を見せ、カリスマ性があるので後輩から尊敬されています。僕もそんな笑顔をしようと、いつも鏡を見て練習をしていますが、なかなかうまくいきません。僕の練習方法は合っていますか?」
ビョンホン「ハハハハ! 今、おっしゃったように、映画の中で韓国舞踊のパフォーマンスを見せるシーンがあります。ハソンというのは非常に滑稽で突拍子もないところがあり、ほんとうに人を笑わせてくれる面白いキャラクターなのですが、そういった姿は他の場面でもたくさんご覧になれますよ。
今、倫さんがおっしゃったパフォーマンスのシーンの撮影はほんとうに大変でした。最初は簡単でたいしたことはないと思っていたのですが、まったくそうではありませんでした。韓国舞踊は基礎から学ばなくてはならず、歩き方にしても長時間の練習をして、ようやく身に着いていくのです。あのシーンは実は、最初の撮影で撮る予定だったのですが、まだまだ練習が足りなかったので、最後に回しました。あのシーンを撮って、撮影がすべて終了したのです。
倫さんの質問ですが、演技の練習はしても、表情の練習はあまりしませんね。俳優というのは、心の中にそういう感情を持っていないと、表情として伝わらないからです。いくら表情だけ練習をしてもぜんぜんだめだから、やめた方がいいですよ」(場内爆笑)
藤原「カムサハムニダ」
久しぶりの来日でやや緊張していたビョンホン氏から笑顔がこぼれ、会場の空気も和らぎました。
Q:シナリオを読んで、このシーンがあるから出演したくなったという場面はありますか?
ビョンホン「今回はどこか1つのシーンだけで出演を決めたのではなく、物語全体が私の心に響いたのです。誰でも一度は『自分が王様だったらどうだろうか?』と想像すると思いますが、それを非常に骨太なメッセージで伝えていました。しかも、重くなりがちなところを、笑えて、コミカルに描いていたので、これは素晴らしいシナリオだと思いました。そこがアピールポイントですね」
Q:俳優として、とても努力をされていると思いますが、身体的に、また精神的に気をつけていることはありますか? また、自分の弱点はどこだと思いますか?
ビョンホン「俳優という職業は、何かを練習したり、何かを勉強したりして、深みを出せるものではないと思います。俳優は人生を語り、自分の身体をもって人生を演技して見せるのです。本を読んだり、自分を磨いたりと、そういうことで俳優という仕事ができるとは思っていません。
後輩にはよく、分別を持ってはいけないと言っています。俳優だけではなく、アーティストもそうですが、そういう人たちには奇抜なアイデアが必要です。時には突拍子もないような考え方もありますが、創意工夫が必要なのです。分別は、そういう創造の芽を切ってしまいます。
日本はどうかわかりませんが、子供が成長していく中で、親が子供に対して言う一番の小言は、もっと大人になれ、分別を持て。私はその反対のことを後輩に言っています。年齢がいくつになっても、たとえ50になったとしても、少年としての心を持っていた方がいい。そういう気持ちがあれば、いい考えも浮かぶし、いろんないいアイデアが浮かび、それを表現することができるのです。
自分の弱味については、たくさんあり過ぎるので、なかなかこれとは言えませんが、今の例でいうと、そんな風に周りの人たちに忠告しておきながら、自分ではそれが実践できていないということでしょうか(笑)」
ビョンホン氏の俳優論は、下手に色をつけず、いつまでも少年のように真っ白で、柔軟な気持ちであれ、ということなのでしょう。だからこそ、どんな役にも染まっていけるのかもしれません。なりきるパワーが持ち味のイ・ビョンホン氏ならではの貴重なご意見で、記者会見は終了しました。(舞台挨拶へ)
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