●師匠としてのウェイプロデューサーとマー監督
Q:今回はマー監督に演出を任されましたが、ご自分で監督をやる場合と違う所はありましたか?
ウェイ「わかりませんね。実は撮影の時は、あまり関わっていませんが、編集ではかなりいろいろと手を加えました。脚本の段階から自分も手がけていて、映画制作の現場にも行っているし、結局、自分の作品のつもりでやっているので、彼はこう撮ったけれど、自分がやればこうなるだろうとか、そういうことは考えたことがなかったですね」
Q:では、今回のマー監督のお仕事に点数を付けるとしたら何点ですか?
監督「結果からすれば、90点以上ですね。制作過程については、もっと勉強してもらいたいことがたくさんあります。でも結局、結果を出すためには、対価を支払わなくてはなりません。そういう意味で、間違いや失敗は全部対価と考えればいいですね」
Q:撮影の時は「早く撮りなさい」と言われたとおっしゃっていましたよ。
監督「急いで撮れとは言っていません。それは、時間を無駄にしないようにという意味なんです。早くやるということと、いい加減にやるということは、ぜんぜん意味が違います。今回は昼間の撮影がほとんどなので、太陽が出ているすごくいいタイミングを逃してはいけませんでした。こういった大きい場面の映画を撮る場合、現場のリズムをどうコントロールするかは監督の腕次第なのです。一分、一秒、全部お金がかかっているので、そこが重要です。
撮影現場に行くとわかるのですが、役者は皆向こうで演技をしていて、監督とカメラマンはこっちで撮っています。すると、何か問題を発見した時に、監督が『待って』と向こうへ行くんですね。歩くのにも時間がかかるのに、役者に対して1つのことしか言わない。これは時間の無駄です。もし、問題を発見したら、行って全部を話さなければいけません。例えば、リハーサルで役者が最初から演じている時に、問題を発見するたびに中断して、行ったり来たりするのは時間の無駄です。それなら、リハーサルを通しで1回終わらせて、途中でどこに問題があったかを記録しておくと、役者へのアドバイスは1回で済みます。
だから、僕が早くしろと言ったのはそういう部分のことで注文を出したわけで、もうこれでいいから早くしろということではありません(笑)」
Q:監督の経験をたくさん話してもらって、すごく役立ったともおっしゃってました。
監督「私自身も彼と同じような道をたどって経験してきました。自分が犯したミスと同じようなミスを彼には犯して欲しくないので、それを教えてあげたんです」
●永瀬さんとの仕事と新作のこと
Q:永瀬さんとお仕事をされた感想は?
監督「このような役者さんとは初めて出会いましたね。今までの私たちの撮影現場では、大体監督が役者とまずコミュニケーションをとって、こういう風にやって欲しいとか、こういうものを求めていると伝え、役者がそれを受けとめて演じます。ところが、彼は違いました。彼が現場に入る時は準備万端で、すでに役作りをして来ています。コミュニケーションの段階では、彼が考えたこと、彼がやりたい人物像を私にも伝え、私を説得しようとしました。そこから、交流が始まりました。
正直なところ、彼の準備は私たちよりもたくさんの時間をかけていて、完成度の高いものでした。結局、説得されて、彼のやりたい近藤監督になりました。撮影の時に、彼の演技を見ましたが、とても説得力のある演技でした。演技とはこうでなくてはならないと思いましたね。私たちにとって、永瀬さんはこの映画の単なる役者だけでなく、クリエイターそのものでした」
Q:私たちにすれば、新鮮な永瀬さんを見ることができました。
監督「今までこういう演技はなかったのですか? それならぜひ、違う永瀬さんが見られますよ、と宣伝してください(笑)」
Q:ウェイプロデューサーも永瀬さんを主演にして、また映画を撮ってください。
監督「わかりました」
Q:新作の予定はないんですか?
監督「次の作品は、ちょうど今、一番初期の準備段階に入ったところです。監督としては今、宿題をやっている最中ですね」
Q:その作品は、いつ頃できるんですか?
監督「後2年はかかるでしょう」
Q:長いですね。
監督「ちょっと難しい映画になりそうです」
と、待ち遠しいお返事をいただいて、インタビューは終了しました。
取材当日は寒波が襲来した頃で、風邪をひかれたのではないかと体調が心配でしたが、たとえ鼻声でも熱く語る時はつい早口になるウェイプロデューサー。日本との関わりを描いた3部作が完成した今、次なる作品は一体どんな映画になるのかも気になるところです。自分が作りたいと思った作品は、何がなんでも絶対に実現させるという情熱が、穏やかなお顔の内側に潜んでいるウェイプロデューサー。きっと充分な準備期間を経て、映画を完成させることでしょう。そんな情熱が、マー監督や大勢のキャスト&スタッフの皆と作りあげた大作『KANO〜1931海の向こうの甲子園〜』にもたっぷり詰まっています。ぜひ、劇場で何度もお楽しみください。
(2014年12月1日 乃木坂にて単独インタビュー)
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