努力は自分のためのもの。努力すれば、心で勝利できる
−ジョシー・ホー(プロデューサー・女優)&ヘンリー・ウォン(監督)
10月10日より日本でも順次公開中の香港映画『全力スマッシュ』。今年の大阪アジアン映画祭でワールドプレミア上映された後、地元の香港では5月に公開されて上半期の大ヒット映画ベストテンにランクイン。その後、日本公開を前に「したまちコメディ映画祭 in 台東」で特別招待作品として上映され、大勢のキャストが来日して映画祭を盛り上げました。
したまちコメディ映画祭で来日したジョシー・ホー(左)とヘンリー・ウォン監督(右)
貴重なこの機会に、アジクロでは主演女優のジョシー・ホーと共同監督を務めたヘンリー・ウォン監督に、単独インタビューをすることができました。取材中は最後まで笑いが絶えず、インタビューというよりは座談会のような雰囲気に。『全力スマッシュ』の撮影裏話から香港映画界の話など、様々なお話を聞くことができました。通訳はサミュエル周さんです。
●新世代監督によるスポーツコメディ『全力スマッシュ』
Q:大阪アジアン映画祭に続く日本での上映です。今のご感想は?
監督「うれしいですね。これ1本で2度も来日できたし(笑)。それに、日本の観客の皆さんは、意外とこの映画を気に入ってくれてます。香港ローカルなギャグや笑いがたくさんあるのに、皆さんがちゃんとキャッチして笑ってくれたのでびっくりしました」
Q:ヘンリーさんが映画界に入られたきっかけは?
監督「学生時代は映画を専攻していました。専門がCGだったので、友人の紹介でこの世界に入り、いきなりCGを担当しました。そこからスタートして、もう10年。その間、いろんな監督たちと仕事をして、多くのことを学びました。中でも、デレク・クォック監督とは5、6年ずっと一緒に仕事をしてきて、いろいろと新しいことを学びました。特殊効果やCG以外のことでもいろんな話をして、わりと意気投合することが多かったのです。たとえば、僕が手がけた前の作品(初監督作となったオムニバス映画の一篇『驚嘩春夢』)には、彼から学んだことをたくさん活かしました。今回は、デレクに映画を撮る時間がなくて、焦っていたので、監督として一緒にやらないかと誘われ、一緒に『全力スマッシュ』を撮ることにしたんです」
Q:ジョシーさんは製作もずっとやっていらっしゃいますが、彼らのような若手についてどう思いますか?
ジョシー「とても素晴らしいわね。まず、脚本に関してだけど、二人ともリッチな感じがする。書き方とか、中味がとても充実しているの。撮影にも独特なスタイルがあって、全員で楽しむことができたわ」」
学生時代にバドミントンをやっていたジョシー
(c)2015 852 Films Limited. Fox International Channels
|
Q:ジョシーさんは映画デビュー作が『青春火花』(ドラマ「サインはV」のリメイク)でバレーボールでしたね。今回はバドミントンですが、ジョシーさんはバドミントンが得意なので、デレク監督があまりふざけられなかったと聞いています。撮影中は指導もしたのですか?
ジョシー「彼はすごく可笑しいの(笑)。まず、デレク自身が素晴らしい役者なのよね。演技がすごくオーバーで、演技指導というよりも、いちいちデモンストレーションをやって見せてくれるわけ…もう、いい。充分!うざいっ!ていうくらいデモをいっぱいやって。じゃあ、次は私がそれをやるの?って(笑)…思うわよね(笑)」
Q:では、バドミントンの腕前は抑え気味にやってらしたんですか?
ジョシー「まあ、そうね」
監督「ジョシーさんは一番上手いので、一番抑えてて、下手に見せてましたね」
●チャウ・シンチーと日本漫画の影響
Q:最初の方ですが、ジョシーさんがすごく太って醜い姿になっていたので驚きました。(ジョシーさん大爆笑)あれは、ヘンリーさんの仕業ですか?
監督「僕もデレクもそうなんですが、結構きわどいというか、どぎつかったり汚かったりするものが、わりと好きなんです。その中にある、独自の美を見い出すのが好きなんですね。僕たちの作品をご覧になるとわかると思いますが、とても高価なものや舶来品を使ってきれいに見せるのではなく、むしろほんとうに汚くて普通のものを使って、その中から全体を見てみるとなかなかいいぞ、と。それが僕たちの嗜好なのかな」
(c)2015 852 Films Limited. Fox International Channels
Q:チャウ・シンチー監督の世界に似てますよね?
監督「僕たちはまさにチャウ・シンチー世代なんです。小さい頃からずっと見て育っているので、似るというよりも、そのものですね」(ジョシーさんも「そう、そう」と納得)
Q:でも、お若いのでエネルギーが画面から出ていますね。
監督「ありがとうございます」
Q:日本の漫画がお好きだそうですが、島本和彦さんがお好きなんですよね?
監督「島本さんが一番というわけではないのですが、大阪で取材を受けた時、どういう作品にインスパイアされたかと聞かれたので、その時は島本和彦さんの作品をあげたんです。ちょうど、この映画と似たような精神を持っているので」
Q:去年、日本で島本さんのドラマ(「アオイホノオ」)をやっていたのですが、そのドラマと雰囲気が似ていると思いました。
監督「島本さんの作品の人物は、とても熱血で努力型でスポ根ですよね。でも、どこかばかばかしくて…そういうところが大好きなんです」
●撮影について
Q:ジョシーさんは演技をする上で苦労されたことはありますか?
ジョシー「演技は大体OKだったと思うけど、一番大変だったのは、バドミントンをやる時ね。今回はCGをかなり使っているので、実際はボールがなくて、空気を打ってるような感じなの。だから、ボールをどの位置で打ったとか、それをキャッチするのがとても難しくて…」
監督「空気を打つので、不注意にやると腕をひねってしまうんです。とても、難しかったですね」
Q:今回は共同監督ですが、お二人に役割分担はあったのですか?
監督「お互いに親友同士で何でも話せるから、ほとんど分担は決めていませんでした。でも、意見がすべて一致するわけではありません。彼は彼なりにいろんなことを言うけど、間違ってると思ったら無視。こっちのやり方でやるよ、と(笑)。でも、現場では多少の分担がありました。スタッフや役者とのコミュニケーションはほとんどデレクがやりました。そうしないと、現場が混乱するので。
編集や音響など、ポストプロダクションの段階では、彼は彼のバージョンを、僕は僕のバージョンを編集して、一緒に観ました。すると『全然違うな』『ああ、こうなるんだ』と。そんな時は、長年一緒に仕事をしてきたので暗黙の了解があって、一生懸命議論します。そして、『あ、ここはよかったね』とまた1つのバージョンを編集する。まあ、妥協ですね。時には喧嘩することもあるけど、最後は必ず話合いで、お互いに満足のいくバージョンを編集しました」
Q:それはジョシーさんもご覧になるのですか?
ジョシー「いいえ。現場はとても自由な雰囲気なので、監督が『見に来て』と言ったら見に行ったわ。一度、編集したバージョンを観たことがあるけど、ちょっと長かったのでどこかをカットしなきゃならなくて。悩んだ末に、じゃあ私の部分をカットしてと」
監督「カットしたけど、結局後からまた入れました(笑)。一応、(ジョシーさんは)社長なので。社長の支持を受けて、ああしろ、こうしろではなくて、僕たちはとても自由な環境で、好きなようにやらせてもらったんです」
Q:ヘンリーさんが演出したシーンで、ご自慢のシーンはありますか?
監督「それはないですね。一生懸命、力を尽くしたとは言えますが。とにかく、たくさんのバージョンを編集しましたが、一番最初のはダメでした。その後、何度も手直しして、加えたり、削ったりして、できたバージョンです。僕の演出した部分がよかったどうかは、観客の皆さんが点数を付けてくれるでしょう」
ジョシー「皆さん、満足してくれてるわよ」
Q:では、映画の中で好きなシーンは?
監督「僕にとっては、甄[女尼](ヤン・ネイ/ジェニー・ツェン)という女性歌手が昔のテレビドラマの主題歌『奮闘』を唱ったところが、印象的ですね」
映画の中でベテラン歌手ジェニー・ツェンが唱う「奮闘」は、無線テレビ(TVB)が78年から79年にかけて放送した全85回の大河ドラマ「奮闘」の主題歌。チョウ・ユンファが主演した人気ドラマで、通訳の周さんも懐かしがっていました。(次頁へ続く)
続きを読む P1 > P2 ▼作品紹介
|