台湾での活動を決意させた言葉
Q:台湾に定着して活動していこうと思ったきっかけは?
蔭山「最初に何本かやって、2006年に映画(『牆之魘』) を1本やって、その後に連ドラ(「幸福派出所」) を1本やったんです。立て続けで、その年は4ヶ月くらい台湾にいたんですよ。その時にいろんな人と話をして、『時の流れの中で』の監督、台湾では有名なチェン・ウェンタン(鄭文堂)監督がこんなことを言ったんですね。『語学はもちろん大切だけど、一番大切なのは芝居だから。例えば、バラってどこの国に行ってもバラでしょ? バラはどこの国に行っても美しいと評価される。それと同じで、いい芝居ってどこの国に行ってもいい芝居だよ』と。
『海外でわからない言語をしゃべってる芝居を見ると字幕があって、それを見ながら、ああ、この人はいい芝居をするなって思うでしょ。一に芝居だから、言語は関係ない。だから、言語がちょっと…ていうので台湾でやらないというのは、理由にならないよ』という話をしてくれて、僕はその言葉にすごく心を打たれて、だからチャレンジしてみようと思ったんですね」
Q:台湾で頑張ってみようと。日本という選択肢はなかったのですか?
蔭山「もちろん、ありましたけど、やっぱり、競争が激しいし、いつチャンスが訪れるかわからない状態がある。そんな中にいるよりも、まず経験値を積みたかった。その経験値を積むためには、監督が言うように『お前がやる芝居がいいかどうか、それは国によってどうこうなるものではないから』。だから、まずは経験値かなあと。だったら、さっさと行っちゃおうと思ったわけです」
ニックネームは「Tamio」
Q:蔭山さんは台湾では「Tamio(タミオ)」という愛称で呼ばれていますが、これは奥田民生さんからきてるそうですね? どうして、それが愛称に?
蔭山「当時、UNICORNが全盛期の頃で、奥田民生さんがロン毛でソバージュっていうか、ドレッドっていうか、細かいパーマをかけていた時期があったんですよ。その時期に僕もまったく同じ髪型をしていて、それで友達が…高校に入ってからかな? 奥田民生の髪型に似てるって言って、そこから『タミオ』です(笑)」
Q:高校のお友達が!?
蔭山「中学の頃の友達は僕のことを『タミオ』とは呼ばないです。高校以上。大学に行くと『高校時代はあだ名なかったの?』って聞かれるじゃないですか。で、思わず、言っちゃったんですよ。別に言う必要はなかったんですけど、それで定着しちゃって。台湾へ行った時も、香港には皆、イングリッシュネームがあるじゃないですか。台湾人にも、ある程度イングリッシュネームがあるんですよ。普段は使ってないけど。そんな感覚で、やっぱり『カゲヤマユキヒコ』って言いづらいし、覚えづらいんです。絶対に。だから、意外と『タミオ』がすぐに浸透したんで、じゃ『タミオ』でいいかなと」
映画『バオバオ フツウの家族』との出会い
(c)Darren Culture & Creativity Co., Ltd
ここからはいよいよ、最新作『バオバオ フツウの家族』についての質問です。蔭山さんが演じるのは、イギリスの永住権を取得してロンドンで働く日台ハーフのチャールズ。台湾の植物学者ティムとカップルで、夏休みに彼がロンドンへやって来た機会に、仕事上の友人であるジョアンとそのパートナー、シンディに彼を紹介。4人で子作り大作戦を開始します。
Q:この作品に出演することになったきっかけを教えてください。
蔭山「プロデューサーからじきじきに、事務所に連絡がありました。連絡先を教えていたので、僕自身へも直接連絡をもらいました。というのも、この映画のプロデューサーはカメラマン出身なんです。2012年に僕が参加した『父の子守唄』という映画があって、そのカメラマンがプロデューサーをやっています。なかなか仕事がかぶることがなくて、それ以来会ってなかったんですが、呼んでもらったので製作会社で話をしました。その時に『当時からすごく芝居が好きで、今回はこういう役があったから、ぜひ一緒にやりたいと思った』と」
Q:最初からチャールズ役だったのですか?
蔭山「いえ。脚本家が書いた時点では、台湾人の設定でした。僕をキャスティングするにあたって、あの役を日台ハーフに切り替えたというわけです」
Q:役作りはいかがでしたか?
蔭山「もちろん、同性愛者の友達にかなりインタビューしました。結構細かいところから、生い立ちや、どうやって男性を好きになっていったのか、家族に対する思いとか、カミングアウトしてるしてないとか、そういうところまでかなり聞きましたね」
Q:台湾では先日、同性婚も認められましたし、アジアの中では進んでいる方ですよね。
蔭山「そうですね。街中で普通に皆、手をつないで歩いてますし。そういう意味ではかなり解放されていると思います」
チャーミングなチャールズの役作り
Q:蔭山さんのイメージですが、これまでの映画やドラマを見ていると真面目というか、きちんとした方という印象があります。今回の役柄はかなりチャラ男というか、今までと違って面白かったのですが、あれは意識的にやられたのですか?
蔭山「そうですね。すごくチャーミングな役柄だったので」
Q:髪型も工夫されたのですか?
蔭山「そうです。髪型も一から考えて、アンニュイな感じというのかな。パーマをかけてみました。服装についても、衣装さんに、そんなに特殊でなくていいから清潔感を出したいっていうお願いはしました。パートナー役のもう一人の方は見た目も普通に男性だし、服装もすごく男性的。だから、パートナー役との対比として、僕の場合はアンニュイな、中性的な感じに持っていきたいと。それで、ああいう風になりました。まあ、僕の中では、自分とはかなりかけ離れています。ただ、かけ離れているから、やり易かったというのもあります」
真面目な植物学者のティムとオシャレで明るいビジネスマンのチャールズ
(c)Darren Culture & Creativity Co., Ltd
Q:思い切って?
蔭山「思い切ってできたし、監督もチャールズという役に、こういう役で、こういう方向でっていう共通認識がありました。お互いにそれに関してはすごく信頼関係があったので、現場でも特にこうしてくれ、ああしてくれと否定されることもなく、すごく楽しかったです」
Q:チャールズは普段がああいう感じなので、最後の方でパートナーと口論をする時に、情熱的な真面目な蔭山さんが出ていて、コントラストもあってよかった思います。
蔭山「ちょっとチャーミングでおちゃらけている役なんですけど、あそこはやっぱり、ああいうパートナーに対する思い、どう思っているかっていうのをお客さんに見て欲しかったんですね。あの役には思い入れがあります」(続きを読む)
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