Q:逆に、演じていて難しかったり、辛かったりしたところはありますか?
蔭山「辛かったことはないんですよ。今まで演じてきた中で、一番楽しかったです。チームワークがすごくよかったし、台湾に帰ってからの撮影にも一体感がありましたね。僕は結構、馴染むまで時間がかかる派なんですけど、先にロンドンに行ったというのもあって、あっという間に溶け込めたし、すごく楽しかった。あまり変な、辛かったなあというのはないですね。あったとしても、多分、楽しい方が記憶に残っちゃってて。そっちですね」
Q:今でもお友達つきあいされているんですか?
蔭山「たまに4人で飯食ったりはします」
共同生活から入ったロンドンでのロケでは息もぴったり
(c)Darren Culture & Creativity Co., Ltd
撮影はロンドンから始まったので、3階建ての一軒家を借りて、俳優とマネージャーたちで合宿をしたとのこと。ロンドンに行ける!というのも出演を決める上での魅力だったようですが、この合宿で皆と仲良くなり、撮影前後にはそれぞれのシーンの話合いもできて、いろんな面でプラスになったそうです。映画の中で、チャールズとシンディが撮るツーショット写真があります。映画の中では重要な写真になるのですが、この時のチャールズの表情があまりにひょうきんだったので聞いてみたところ、なんとこれは、演技ではなくオフショットだったとか。監督が気に入ってそのまま使うことになったのだそうです。これもきっと和気藹々な雰囲気だからこそ、出てきた表情なのでしょう。
Q:体外受精のシーンが宇宙飛行になぞらえてありますが、最後にまた宇宙飛行士が出てきます。単純なハッピーエンドではなくて、もう1つ挑戦があるということなんでしょうか?
蔭山「そうですね。宇宙飛行士は最初から決まってたことで、エンディングの方は最初の台本にはなかったと思うんですけど、僕も完成品を観て、ああ、ここにもこれを入れてくるんだと思った感じがしますね」
エンディングは観る人によって、いろんな受け止め方ができるでしょう。先ほどのツーショット写真と一緒に、ぜひスクリーンでご確認ください。
脚本家として、そして監督への思い
Q:脚本家の蔭山さんからみて、今回の脚本はいかがでしたか?
蔭山「それが一番難しい質問なんですが、いじりたいところは多々ありました。実際に、いじったところもありました。もちろん、脚本家の了解を得て、監督と共演者の了解を得て、こうしていきたいと。僕はこうした方が絶対にいいと思うからって、セリフをがらっと変えたシーンもありました。ただ、きりがないんですよね。僕は脚本家が書いた時点での思いっていうか、新人であろうとキャリアがある人が書いたものであろうと、やっぱり完璧な状態で生まれる脚本って絶対ないと思うんですね。それに、映画は監督の作品だと思っているので、監督が思い描くものとあまりにずれていたら、それはちょっとだめ。僕は一俳優としてオファーを受けたわけですから」
Q:蔭山さん自身は脚本だけでなく、今後は監督もやってみたいですか?
蔭山「うーん、そうですね。ぜひ、やってみたいなと思うし、一応その…そういうことがあった時にアタフタしないような準備はゴソゴソとしてます」
Q:これを映画にしたいなっていう脚本はあるのですか?
蔭山「すでに何本かあって、1本はほぼできています。修正はもちろんすると思いますけど、世に出せるものはあって、買いたいという人もいたんですが、売りませんでした。売ったら多分、今頃お金持ちになってたと思うんですけど(笑)。やはり脚本は自分の子供みたいなものなので。シルヴィア・チャンさんがすごく、原作者の思いを尊重してくれていたから、それが当たり前というかスタンダードみたいになっちゃったんですよね」
そこは大事ですよね。
蔭山「だから『お金は出すよ。いくら欲しいの?』みたいな感じで来られると、ああ、この人たちに預けてもいいものができないなと思ってしまって。この作品は日台とは関係ないです。でも、今これから書こうとしているもの、2本あるんですけど、それはどちらも日台に関係していますね。僕はこうして台湾でチャンスをもらって、台湾で生かされたと思っているんで、やっぱりそういう日台間のものっていうのは、これからもやっていきたいと思います」
自身の脚本で監督デビューも楽しみな蔭山さん
Q:完成はいつ頃ですか?
蔭山「なんとも言えないですけど、できるだけ早いうちにやりたいなあと思っています。でも、脚本家としてもまだまだいっぱい学ばなくてはならないことがあると思うので、自分のその時の気持ちに正直にやりたいなと思います」
Q:自分で出演もされたい?
蔭山「それは、どうですかね…北野武さんじゃないんで、自分がやって自分が監督するってのは、ちょっと厳しいかもしれないです。まあ、慣れてきたらやるかもしれませんが。多分、監督は監督だけやりたいかな。今のところはそう思っています」
ありがとうございました。
じっくりと考えながら、言葉を選んで話す蔭山さんは、イメージ通りの真面目で真摯な方でした。目力が強いので「時代劇が似合うかもしれませんよ」と話すと「やってみたい」と意欲的。蔭山さんの時代劇もぜひ、観てみたいものです。トークショーで話されてた憧れの俳優という金城武さんとの共演もいいかもしれませんね。マルチに活躍されているので、今後どんな方向へ行くかわからない、というところも楽しみです。まずは、28日から公開される『バオバオ フツウの家族』で、チャーミングな蔭山さんをご堪能ください。
(2019年5月27日 台湾文化センターにて)
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