司会「アンディ・ラウさんとは、俳優同士で話合う時間など持たれたのですか?」
アン「一緒に多くの時間を過ごすことができました。撮影中は仕事の話もたくさんし、今では弟のような友だちのような、そういう間柄になりました。食事は普通、レストランなどでするのですが、ある日、アンディさんのチームの方たちがレストランには行かず、部屋で食事をしていることがありました。部屋の前を通ったらおいしそうな匂いがしたので、どうしても覗いてみたくなったんです(笑)。すると、アンディさんが中へどうぞと言ってくださり、私も仲間に入ってご馳走になりました。ほんとうにおいしかったです。なので、これからは一緒に食べようと思い、できるだけ私から誘うようにしました(笑)」
と、穏やかだけど、楽しそうに笑いながら話すアン・ソンギは、やっぱり素敵にかわいいおじさまです。
司会「逸悦は秘かに1人の男性を思いながらも、自分の使命などで悩みます。自分ではどんな思いで演じましたか?」
ファン「逸悦は革離を好きなんだけど、どこか信じられないところもあり、若い女性が男性に対して思うように、常に繊細でちょっと不安定にもなっています。彼が1人でやって来て城を守ろうと言った時、周りの人は皆信じませんでした。彼女も同じで、1人で数万人もの大軍をどうやって退治するんだろうと疑っていました。ところが、彼が智恵を使っていろんな問題を解決し、適を退治した時には、町の住民と同じように彼をだんだん尊敬するようになり、個人的にも好きになっていきました。ですが、古代女性の愛情表現はストレートではなく、とても繊細で優しく、今風の愛情表現とは違うので、そこに注目して演じました」
司会「ご自身は、好きな人には中国女性らしく控えめで、あまり言葉には出さず、じっと待つ方ですか? 日本女性は大体そうなんですよね」(会場笑)
ファン「じゃあ、私も日本の皆さんと同じです(笑)。ストレートに告白して相手にされなかったら、やっぱり恥ずかしいですから。秘かに好きになって、相手になんとなく暗示をかけるようにして、気づいて欲しいです(笑)」
司会「阪本監督は、いつも元気ばりばりで現場を仕切っておられるプロ中のプロですが、今回の撮影現場はかなり気候的に厳しかったのでは?」
阪本「寒い所で撮影したことはありますが、約2ヶ月間をずっと零下の所で撮影したのは初めてです。監督はナイトシーンの闘いが好きで、多いんですが、夕方から朝までやると大体零下10度以下になります。あの寒さの中で、皆さんがアクションシーンをやるのはほんとうにびっくりしました。僕のカメラも普通はスイッチを入れると、2コマから3コマで通常の1秒24コマのスピードにあがるんですが、助手が監督に通常のスピードになりましたよと伝えるのに、5秒から10秒くらいかかりました。寒くてなかなかモーターが回らない。そういう状況での撮影でした」
司会「では最後に、この映画はピンチの連続ですが、これまでで最もピンチと思った瞬間をそれぞれお聞かせください」
ラウ「一番ピンチと思うのは、テレビでよく見かける戦争です。遥か遠い所のように感じますが、いつか身近な所でも起こるんじゃないかと思うと、それが一番恐いな」
司会「(映画に引っ掛けて)いつでも助けに来ますよね?」
ラウ「(客席を指して)彼女たちはね」
と意地悪なお答え。その後で「大丈夫?」とクロさんをフォローしていました。このお2人、今やボケとツッコミの漫才コンビみたいになってます(笑)。
アン「実は最近、『今までの人生で一番辛かったこと』についての原稿を頼まれたんですが、とても悩みました。というのも幸いなことに、自分は今までそれほどピンチということもなく、順調に生きてこれたのです。もしかしたら、皆さんがピンチと思うようなことを、自分でそう思わなかったのかもしれませんが。好きな映画の仕事をしながら、今まで生きて来ることができました。もしかしたら、これから危機に陥るかもしれませんが、その時はいい機会だと思って、前向きに受け入れたいです」
ファン・ビンビンには質問の意図が通じていなかったようで、「人と人が交流するには、寛容な心が大切だ」と語っていました。阪本監督からは現場の方らしい貴重なご意見を。
阪本「映画をご覧になると、この作品のスケールと迫力の凄さを絶対に感じると思うのですが、残念ながら、日本映画の力だけでこのスケールを作ることは段々難しくなってきました。これは僕にとって一番ピンチでした。それを今回、ジェイコブ・チャン監督と日本人のプロデューサーに誘われ、このような映画に参加できて、自分が積み重ねて来た引き出しというか、職人の芸みたいなものが思い切ってできたという幸せがあります。やはり日本にも、このようなスケールの映画らしい映画が、かつてのように自由に作れる時代がもう一度来ればいいなあというピンチを感じつつ、この映画に参加しました」
そして最後、なかなか答えが見つからない監督でしたが、クロさんに迫られて
監督「我々にとっては、スタッフの方たちもスターだと思っています。今回、中国や韓国からいらした方にも感謝していますし、阪本さんにもこの場を借りて、ありがとうとお伝えしたいと思います」(拍手)
と、ゲスト俳優や阪本監督を労う言葉で幕となりました。さあ、いよいよ3日より公開の『墨攻』。国際的な俳優同士のアンサンブルと同時に、国際的なスタッフたちによる技術のアンサンブルも、たっぷりお楽しみください。
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