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ASICRO FOCUS file no.96

「王妃の紋章」来日記者会見

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左よりジェイ・チョウ、リア・ディゾン、チャン・イーモウ監督、ビル・コン
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2008.2.11
グランドハイアット
ホテル(六本木)



 12日より日本でも公開が始まった、チャン・イーモウ監督の最新作『王妃の紋章』。公開に先立つ2月初旬に、監督とプロデューサーのビル・コン、主演のジェイ・チョウが来日して記者会見が開かれましたので、ご紹介します。

 監督「皆さん、こんにちは。この映画が日本で公開されるのをうれしく思います。気に入っていただけたらうれしいです」
 ジェイ「ミナサン、コンニチハ。ボクハ、ジェイ・チョウデス。ぜひ映画をご覧になってください」
 ビル「ぜひ、この映画を気に入っていただけたらと思います」

 質疑応答の前に、まずは司会者からの質問。

 司会「このような豪華絢爛な作品を作るにあたり、どのくらいリサーチされたのですか?」

チャン・イーモウ

五輪も手がけるチャン・イーモウ監督
 監督「この物語は、中国で大変有名な舞台劇を翻案したものです。原作は曹禺(ツァオ・ユイ)先生の『雷雨』。中国では誰でも知っている、とても有名な作品です。特に演技を学ぶ学生たちには、この舞台劇のある場面が必修科目になっているくらい浸透しています。背景は1930年代の中国社会。翻案化にあたっては、どの時代でもよかったのですが、個人的に唐の時代に興味がありました。豪華絢爛な時代です。その豪華絢爛なパッケージの下にある登場人物たちの孤独や悲しさを、大きな落差で表現することができるのではないかと思いました。当然、準備には時間がかかり、いろんなリサーチをしたり、資料を集めたり…、少なくとも8ヶ月間はかかると思いました」

 ビル「この作品は、これまでの中国作品としては最高の製作費がかかっています。セットにしても、衣装にしても、一番お金をかけた作品です。最高の腕を持つプロの方たちに作ってもらいました。その成果は、皆さんにご覧いただけると思います」

Q:監督が演出される北京オリンピックの開会式も、このようなものになるのでしょうか?

 監督「オリンピックの開会式は映画とは違うものになるでしょう。開会式は必ずしも豪華絢爛になる必要はありません。むしろ、世界中の人たちが見てわかるような、中国の伝統や精神を結合したものにできればと思っています。基本的には大きな広場での実演になるので、まったく違うものになります。シンプルでわかりやすいものにしたいと思います」

Q:ジェイ・チョウさんはご自分でも映画を監督(『不能説的、秘密』)されていますが、チャン・イーモウ監督から影響された部分は?

 ジェイ「いろんな場面で、影響を受けていると思います。現場に監督がいて、自分の仕事がない時は、どういう風に撮影していくのか秘かに観察していました。また、とてもたくさんのことを教えていただきました。特に色の使い方などを学びました。僕が映画を撮る時は、華麗なものや美しい景色なども取り入れます。僕が生まれ育った台湾には、学生時代を過した所にとても美しい風景があるんです。そこで、ラブストーリーを撮る時はこういう感じ、父と息子の交流を描くシーンではこういう色合いを使う…と、そういう部分について、監督からいろんな影響を受けました」

演出シーン

演出中のチャン・イーモウ監督 copyFilm Partner International Inc.
 監督「今、ジェイの話をお世辞じゃないかなあと思って聞きながら(笑)、いろんなことを考えていました。『王妃の紋章』を撮影した時、彼が撮影したMTVを観ましたが、とても魅力的で、いろんなアイデアが詰まっている作品でした。とても好きです。

 俳優としての評価ですが、僕の想像をはるかに越えた素晴らしい演技を見せてくれました。中国で公開された時は、とても好評でした。この映画には何人かの登場人物がいますが、愛の心、明るい未来への気持ちを持っている人物は彼だけでした。他の人物はどちらかというと、どこか奇妙な感じがする者ばかりです。特にジェイが扮する人物の母親への愛、そして母親の言うことならどんなことでもするという気持ちは、観客の皆さんに常に感動を与えると思います。最後は死んでしまいますが、そこでも、とても感動的な要素を与えてくれています。

 映画のエンディング・ソング (「菊花台」) も、ジェイが自ら手がけてくれました。初めて聴いた時、とても感動しました。このような作品を書くことができるのは、この映画の登場人物をかなり深く理解しているから。また、歌を書くだけでなく、歌ってもくれました。彼が登場したからこそ、彼のような真心や感情を見せられたわけで、この映画に感動するような彩りを添えてくれたと思います」

 司会「エンディングの主題歌は、どのような気持ちで作ったのですか?」

 ジェイ「撮影の時、すでに歌詞は考えていました。撮影が終わってからメロディを作り始めたのですが、これまでの僕のアルバムはどちらかというと中国的な色彩が強かったので、今回はなるべくそこから抜け出して、違う可能性を探りたいと思いました。皆が口ずさめるような作品にしたかったのです。実際は、メロディをどうやって歌詞に合わせるかをじっくり考えました。こんなに時間をかけて歌を作ったのは、今回が初めてです」

Q:歌手のジェイ・チョウさんを起用しようと思った理由は?

 監督「脚本の段階では、まず王様と王妃の人選を考えていて、迷わずコン・リーとチョウ・ユンファが最適だと思いました。早速、彼らに連絡して、とても喜んでいただき、すぐに快諾をもらいました。次に若者たちですが、今の時代を代表するような人物が1人、どうしても必要だと考えました。つまり、この人物に関しては、とても純粋で真心があり、素朴で、でもどこかとても強烈な、そういう気質を持っている役者を求めていました。こちらも、迷うことなくすぐにジェイ・チョウを思い付きました。ちょうど、プロデューサーもジェイを推薦していて、彼が最適の人選だと聞いたので、早速連絡しました。

 彼もとても喜んでくれ、快諾してくれました。早速、お会いして、物語についていろいろと議論しました。今回、この3人の組合せを、黄金トリオと呼んでいます。この映画が中国で公開された時には、なんと『HERO』を抜いて今も1位になっています。また、ジェイが書いてくれた「菊花台」は去年の中国ヒットチャートで常にトップとなり、若者たちの間では着メロになったり、カラオケで必ず唱う歌になったそうで、私もとても喜んでいます」

Q:これだけの大作で主演することになった感想は? また、一番印象に残ったシーンは?

 ジェイ「とてもプレッシャーを感じました。以前に出演した『頭文字D』とは、まったく作品が違いますから。『頭文字D』はどちらかというと、僕の大好きな漫画作品というのが主体だったのですが、この映画では大変有名な大監督やスーパースター2人と共演することになり、まるで夢のような世界でした。1000人以上の方が出演しているアクション映画で、いろんな立ち回りもあるので、もし自分が1回でもNGを出せば、全員でもう1回やり直さなければなりません。この辺がとても辛かったのですが、とてもやりがいのある仕事で、やってよかったです。なにより、このような皆さんと仕事ができて、とても愉快な経験でした。現場での監督はとてもいい方で、僕が何度NGを出しても絶対許してくれました」(続きを読む)


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更新日:2008.4.25
●back numbers

記者会見の表記
司会・質問者
監督(チャン・イーモウ)
ビル(ビル・コン)
ジェイ(ジェイ・チョウ)
監督プロフィール
チャン・イーモウ/張藝謀

*プロフィールはこちら

●追記:
98年には中国の紫禁城を舞台に『トゥーランドット』を演出。06年12月には、ニューヨークでタン・ドゥンによるオリジナルオペラ『秦始皇』を演出している。08年の北京オリンピックでは開会式・閉会式のチーフ監督をつとめる予定。
filmography

・紅いコーリャン(87)
・ハイジャック
 /台湾海峡緊急指令(88)
・菊豆(90)
・紅夢(91)
・秋菊の物語(92)
・活きる(94)
・上海ルージュ(95)
・キープ・クール(97)
・あの子を探して(99)
・初恋のきた道(99)
・至福のとき(02)
・HERO(02)
LOVERS(04)
単騎、千里を走る。(05)
王妃の紋章(07)
俳優プロフィール
ジェイ・チョウ/周杰倫

*プロフィールはこちら

●追記:
『王妃の紋章』出演後、古巣のアルファレコードを離れ、自らJVRミュージックという製作会社を設立。初監督した作品『不能説的・秘密』が中華圏で大ヒットし、07年の台湾電影金馬奨で主題歌賞、視覚効果賞を受賞した他、台湾傑出映画に選ばれている。08年2月には、2度目の来日コンサートを日本武道館で開催。また本作に続いて、8月には最新作『カンフー・ダンク!』の日本公開が予定されている。
filmography

・ジェイ・チョウを探して (03)
 *カメオ出演
頭文字D THE MOVIE (05)
王妃の紋章(07)
・不能説的・秘密 (07)
 *初監督作品
 *8月下旬日本公開予定
・カンフー・ダンク! (08)
 *8月日本公開予定
製作プロフィール
ビル・コン/江志強

香港を代表するインディペンデント系映画会社EDKO FILMS(安樂影片公司)代表。初めてプロデュースを手がけた『青い凧』(93)がハワイや東京をはじめ多数の映画祭で受賞。続くイム・ホー監督の『息子の告発』(94)も、東京国際映画祭で作品賞・監督賞を受賞し、その後、多数の話題作や大作を手がけている。

2000年、『グリーン・デスティニー』がアメリカで2億1,000万ドルという驚異的な興収を記録。オスカー4部門、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞と監督賞を受賞し、アメリカ映画史上、最もポピュラーな外国語映画となった。04年には、クァク・ジェヨン監督の韓国映画『僕の彼女を紹介します』を製作。韓国、香港、中国で初めて同時公開させている。
filmography

・青い凧(93)
・息子の告発(94)
・グリーン・デスティニー
 (2000)
・春の惑い(02)
・HERO(02)
・たまゆらの女(02)
僕の彼女を紹介します(04)
LOVERS(04)
単騎、千里を走る。(05)
SPIRIT(06)
王妃の紋章(07)
ラスト、コーション (07)
・不能説的・秘密 (07)
・Blood/The Last Vampire (07)