ミシェル・ヨーとリュック・ベッソン
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2012.6.26 ヤクルトホール(新橋)
今、世界中が注目している時の人、アウンサンスーチーさんの半生を描いた『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』が、いよいよ7月21日より公開されます。本作の企画は、2007年に主演のミシェル・ヨーが、作家でもあるレベッカ・フレインの脚本に出会ったことからスタートします。映画化を決意したミシェルはリュック・ベッソン監督に助けを求め、脚本に感動した監督の手により、映画が完成したのでした。
そのリュック・ベッソン監督と主演のミシェル・ヨーがジャパンプレミアのため来日。上映前に舞台挨拶を行いました。
ミシェル・ヨー「(日本語で)おはようございます。私はミシェル・ヨーです。どうぞよろしくお願いいたします」
リュック・ベッソン監督「ハロー・エブリボディ!(会場笑)ありがとう。この30年間、日本には何度も来日しています。去年の夏、3.11の大震災の直後にも来日しました。また帰って来られて光栄です。私は良い時も悪い時も皆さんと一緒にいたいと思っています。日本は私の2番目の祖国だから。(拍手)また、この場を借りて、長い間パートナーでいてくださり、この作品にも多大なサポートをしてくださった角川会長にもお礼を申し上げます」
司会「素晴らしい作品ですが、映画の製作までの経緯を教えてください」
監督「これから上映があるので、あまり話し過ぎないようにしたいですが…実はミシェルが脚本を持って来ました。そして僕にプロポーズした(隣りでミシェルが監督に脚本を差し出してプロポーズする演技)。それで、雇われました。(会場笑)フランスは今とても不景気で、仕事がなかったんです(笑)。プロデュースを依頼されたので脚本を読んだのですが、とても感動して泣きました。それで、ぜひ監督をやりたいと言ったんです。彼女は受けてくれました。やさしいですね」(会場笑)
司会「アウンサンスーチーさんを演じる上でのご苦労、役作りは?」
ミシェル「まず、東京に来られて大変うれしいです。日本にも縁の深いアウンサンスーチーさんの映画をここへ持って来たことで、丸い円ができあがりました。この映画は私たちの愛だけで作りました。たいへんな挑戦でもありましたが、アウンサンスーチーさんやビルマの人々が直面している困難に比べれば何でもありません。この作品で、よい人間であろうとすることや周りの人たちにやさしく接することについて、多くのことを学びました。
役作りで一番苦労したのは10キロ痩せたこと。(監督がじっとミシェルを見つめる)そんな顔で見ないで。あなたがそれでいいって言ったのよ(笑)。この方と仕事をするのは大きな喜びでした。彼はプロフェッショナルで、最高の演技を引き出してしてくれる監督です。
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世界で活躍するアクション女優と人気監督という二人は旧知の仲。香港国際映画祭でもリュックベッソン監督がミシェルをエスコートしていました。
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この映画のタイトルは『The Lady and The Gentleman』にしてもいいでしょう。夫のマイケル・アリスについての物語でもあるからです。最近、テレビのニュース映像で女史の姿がよく流れているので、映画の宣伝をしていただいているようで有難いです(笑)。彼女は別の視点から見れば、シンボル以上の存在。女性であり、2児の母であり、1つの国の母であり、妻であり、そして何もよりも善良な人間です。私たちが感じたそんなインスピレーションを、皆さんにもぜひ感じていただきたいです」
監督「(長い日本語通訳を聞いた後で、感心したように日本語で)へえ〜、そうですかー」(大爆笑と拍手)
司会「アウンサンスーチーさんと実際にお会いになったそうですが、その時のエピソードを教えてください」
ミシェル「何度か会っています。1度目は2010年の11月で、撮影中でした。スーチーさんが自宅軟禁から解放されたとバンコクで聞いて、ラングーンまでは飛行機で15分ですから、みんなでご挨拶に行こうパスポートを申請しました。ところが、ビザが下りたのは私だけでした。当時の政権がとても慎重だったせいもあるようです。それで1日だけ行くことにしました。監督はもう少しで大きなシーンがあるからとスケジュールを気にしていましたが、とにかく私は行きました。
最愛の家族をロンドンに残し、ビルマに留まることになるスーチーさん。遊説や演説シーンでのミシェルはまさにスーチーさんそのもの!
ノーベル平和賞授賞式の模様(右)は現在開催中の「家族の肖像展」で実物を見ることができる。
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(c)2011 EuropaCorp - Left Bank Pictures - France 2 Cinema
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とても興奮し、またナーバスになりました。それまでの4年間、自分が生きて来た女性と実際にお会いするわけですから、とても緊張しました。それまで毎日、彼女の声を聴き、顔を見て、話しかけていました。彼女は一言も話さないけれど(笑)。
車に乗って向かった自宅はとてもリアルでした。リュックが作ったセットとまったく同じものだったから。迎えに出て来たNLDの皆さんが挨拶をしてくれましたが、なんと自分の(映画での)仲間が出て来たようでした。それで、私はよく知っている場所のように家に入り、あちこち眺めました。書斎で待っていると、背後で『ハロー!』という声が聞こえ、振り返るとご本人が立っていました。初対面でどう挨拶をしたらいいのか、深々とお辞儀をすればいいのか…作法がわからず戸惑っていたら、彼女は大きく手を広げてぎゅっと抱きしめてくれました。そして、素晴らしいひと時を過ごしました。とても思い出深いです」
司会「監督もその後で、お会いになったんですよね?」
監督「その数週間後に会いに行きました。ミシェルが言ったように、同じ家があり、同じご婦人がいました。(会場笑)彼女(ミシェル)と4ヶ月過ごした後に、もう一人がいるなんて。まるで現実と夢とに同時に遭遇するような、シュールな状況を体験したのは初めてです。とても混乱しました。でも話を始めるとすぐに、映画を撮影していることを忘れました。映画に関する質問さえ忘れていました。私たちは人生や子どもたちや、未来、ビルマなどなど、映画以外のあらゆる話をしました。(会場笑)話が終わる頃に、映画の話をするのを忘れたと気づいた。そのくらいパワフルな方でした」
お話が長くなってしまい、質疑応答は1人だけに。21年前に政治亡命で来日した政治難民の男性が選ばれました。ご本人は今、東京大学の修士課程でビルマの政治と民主化について研究されているとのこと。「ミンガラバ!」とビルマ語でご挨拶された後、映画への感想とビルマ人を代表してのお礼を述べてから「今、ビルマの人々やアウンサンスーチーさんにメッセージを贈るとしたら?」と質問。
ミシェル「ビルマの方々に伝えたい言葉はこの作品に全て詰まっています。私たちはいつも気にかけ、忘れずに見守り、物事がよりよい方向へ向かうよう祈っています。もちろん努力して、いつも外から皆さんやビルマ全体にスポットライトをあて続けます。質問者の方も、いつかビルマに帰れることを祈っています。この映画は愛で作った作品です。この作品を観て、観客の皆さんにビルマの方々を思う気持ちが芽生えればと思います」
監督「私がビルマを思う気持ちは2時間あります。メッセージは(これから上映される映画で)皆さんと分け合うことにしましょう。(会場笑)最後に一言だけ付け加えさせてください。とても悲しい出来事ですが、これは真実のお話です」
以上で舞台挨拶は終了。フォトセッションの時間がかなり短くなってしまったのが、ちょっと残念でした。
『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』では、日頃私たちが目にしているビルマ民主化リーダーのアウンサンスーチーさんではなく、その生い立ちから幸せな結婚生活を経て、なぜビルマに留まり民主化活動に関わることになったのか、その背景と苦悩、それを支えた家族との愛と絆が中心に描かれています。か細くたおやかでありながら、強靱な精神と凛とした姿勢を保つパワーはどこから来ているのか、がよくわかる作品です。
さらに、得意のアクションを封印したミシェル・ヨー渾身の演技とリュック・ベッソン監督のユーモラスな演出も魅力の1つ。ドキュメンタリーテイストも交えつつ、イギリスとビルマの映像を交互に描き、緊張感ある人間ドラマとしてもよくできています。双子の夫を演じたデヴィッド・シューリスや、2人の息子たちの活き活きとした演技も見どころ。けっして難しい作品ではありません。たくさんの方々に観ていただきたい愛の物語です。(その他のPR活動へ)
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