今は昔の「映画祭突撃行動」体験談
時、折しも映画祭真っ盛り。皆さんもお目当ての映画を楽しみに、過ごしていらっしゃる頃かと思います。
最近では、韓国で開催される映画祭や映画の授賞式等を観賞する日本発のツアーが珍しくなくなりましたが、ほんの数年前までは自分で開催日程を調べただけで「とにかく行っちゃえば何とかなるでしょっ!」的訪韓をした方も、少なからずいたのではないでしょうか。
かく言う私がその1人で(苦笑)、韓国のサイトでとある映画の授賞式の日程はつかんだものの、当時はチケットを日本から購入することができず、私にとっては「現場に当日行くしかない!」だったのです。そこで今回は、私が「当時どんな突撃行動をしてしまったか」をお話しようと思います。
韓国到着後、なんとか授賞式の会場に辿り着いたものの「チケットは売り切れです」とつれなく言われたのですが、「ここまで来たのだから!せめて授賞式にノミネートされた女優・男優の面々が、会場に到着する様子だけは見て行くぞー!」とめげませんでした。日本では考えられないことですが、たとえチケットがなくても会場のロビーまではフリーパスだったのです。
そこには韓国の女子中学生・高校生らしき少女たちや、多くのカメラマンが陣取っていました。そして三々五々、ウォン・ビンだの、チャン・ドンゴンやイ・ビョンホンたちが笑顔で入場していったのでありました。「ひゃ〜ウォン・ビン、顔小さいよ〜!」と唸っていると、周りでは少女達が一斉にキャーキャー言いながら、携帯メールを物凄いスピードで打ち出しました。「ウォン・ビンが来た!」初めて見た携帯メールの画面にはそう打たれていました。
少女たちも映画祭のチケットを持っているわけではなく、俳優たちの入場が終了し、映画祭が開始される頃になると、あっという間に帰宅の途についたようで、ロビーはガランとなりました。そりゃそうですよね。チケットを持っている人たちは会場内に入ってしまったのですから。
ロビーにまで入れて、この扉の向こうでは授賞式が行われていると思ったら、余計に見たくなるのが人情というもの。(ですよね?)モノは試しで扉の方へ行くと、案の定
「チケットは?」
と扉前に立つスタッフに聞かれました。咄嗟に
「友人が持っています。友人は中で座っています。」
と大嘘をついてみました。が、即座に、
「チケットを持っていなければ貴方は中に入れません。」
と却下されました。
ま〜チケットないもんはないんだよね。これはもうあきらめるしかないかな…帰る前にトイレ行っておこう!と用を済ませ、再び扉の前を通ると…今度はスタッフがいないのです。
え?いない?(=チケット・チェックはない?)の…のぞいてみてもイイかなぁ〜? 気づいたら、扉をあけていました(笑)。すると、悪いことはできないモノで、別のスタッフが会場内にいたのです。(わ!めっかってしまった!)すると、そのスタッフが言ったのです。「早く中に入って、扉を閉めて!」「は、はいっ!」
命令されたらし方ありません(苦笑)。言われるがまま中に入り、さてどうしよう…そこかしこに空席はあるものの、今いないだけで後から来るかもしれないし、その界隈にいる人たちの顔ぶれや雰囲気からして、いわゆる関係者のおじさんだらけで、「お仕事」で授賞式を見ている人たちのエリアだったのです。
壁際に立ったままでいいや…運良く(?)中に入れてしまったのだから、と思っていると、近くの席のおじさんが何やらコッチを見て言うのです。(え?まさか…私、怒られているんじゃないよなあ?)何をおっしゃっているかよくわからないのですが、「いいから、こっち来い!」というジェスチャーをなさるのでフラフラと歩み寄って行くと、おじさんは隣の空席をバンバン叩き「いいから、ここに座れ!」(笑)。
命令には従わざるを得ないというか、年長者の言うことには逆らえないというか、そんなこんなで、授賞式をひととおり座って観賞し(チケットもないのに!)式典が終了すると、観賞していたファンたちがどどど〜っとステージに押し寄せ、お目当ての俳優さんをつかまえては写真やサインをねだり始め、マスコミやカメラマンは受賞した女優や俳優を座席界隈でインタビューし始め、この時、場内は「全然、警備体制はなく」「一般人とマスコミと俳優とを別々にしようとするスタッフもおらず」いわば「無礼講」って状態。(笑)
ススス〜っと俳優さんのところに進んで行き「主演男優賞おめでとうございました! 日本にも来て下さいね!」そう告げることも、写真を撮ることも出来たんですね。
最近のナントカ様ブームを待つまでもなく、訪韓する日本人ファンの多さと熱狂ぶりのせいか、最近は警備も厳しくなってしまったようですが、これはまだ今のように『韓流』が顕著でなかった少し前「とりあえず当日現地に行けばなんとかなる」が通用した頃。「あの日あの会場には、二人しか日本人はいなかった」というくらい昔のお話でした。
*ご注意
このお話は、決してこのような「突撃行動」を推奨するものではありません。かといって、ここで告白することで懺悔をしているわけでもありません。皆さん、大人ですものね。自分の行動は自分の責任と常識の範囲内で頑張って下さい。
(2004年10月26日)
text by 龍玲花●プロフィール
東京都、荻窪生れ。韓国との第1種接近遭遇は、1997年サッカー韓国代表。以後、2000年から韓国映画が加わり現在は韓国映画とサッカー韓国代表との間をハートが往復する日々。「言葉は耳から覚える!」がモットーで、未だ読めるハングルは、選手名、チーム名、俳優名、映画のタイトルに食べ物…と偏りっぱなし。ミーハー体質のまま未来永劫突き進む所存也。
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