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更新日:2006.6.23

アジア接近遭遇の旅

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韓国伝統茶と鹿の角

 風に吹かれると顔がしびれるように寒い1月の終りに、「韓国の伝統茶」を飲んでみようということになりました。柚子茶とか花梨茶など、日本でもお馴染みの甘いタイプではなく、どちらかといえば「韓方」(韓国の漢方は、韓方と書くんですよね)な味と効能を求めてみたのでした。

 景福宮方面の通り沿いに、伝統茶のお店があるというので早速出かけました。どれが良いのかわからないので、もうネーミングだけで選んでみました。
 「鹿角大補湯(ノッカクテボタン)、お願いします」

 色は黒いわ、松の実がういてるわ…いや〜、なんというか漢方的風邪薬みたいな味(苦笑)。お茶うけなのか、甘納豆ならぬ、甘い乾燥生姜がついてきました。その昔、日本のお抹茶でもお茶うけ菓子として、砂糖をまぶした乾燥生姜があったとか。やはりお茶=薬なんだなと納得。この漢方的風邪薬風味は…そうだ、葛根湯みたいな味でした。

 十全大補湯(シプチョンテボタン)という、名前からして「とにかくいいもの全部いれました」にもトライしてみました。う〜ん。苦い。そして甘い?ような風味。多分、黙って出されたら、鹿角大補湯(ノッカクテボタン)も十全大補湯(シプチョンテボタン)も、私には「漢方ぽく苦甘い」味で見分けがつかないでしょう。

 でも、ひと口、ふた口、と飲み進んでいくと、味覚というより身体がこのお茶を欲っするようになってくるのです。うん、そうか、身体に必要な何かが含まれているのだな、という感覚がしてきます。

 お店のおばあちゃんがしきりに「これをお茶に入れて飲んで」と指差したのは、小皿にのったやや薄茶色のプルンとしたゼリー状のモノ。
 「う〜ん。これは一体何ですか?」と尋ねると
 「コレなのよ、コレコレ!」
と差し出したのは鹿の角。鹿の角は堅いですよね? でもゼリーはプルンプルンなんです。

 「コレ(鹿の角)が、これ(ゼリー)ですか?」
?マークが消えない私の腕をとるとおばあちゃんはズンズンと台所へ。そして鍋の蓋をあけて「ほら!」鍋でグツグツと煮られているのは、鹿の角!
 「煮るんですか?」
 「そうそう! そして放っておくと、その後にゼリー状のモノが出てくるの」

 どうも、そういうことらしい。多分(苦笑)いえ、ほら、互いに自分の国の言葉で身振り手振りで会話しているもので(^^;)
 「あ〜それで鹿角大補湯(ノッカクテボタン)!」
おばあちゃん、深くうなずく。
 「この鹿の角は凄く身体にいいのよ」
 「まさに漢方! おばあちゃん、鹿の角、私、欲しい!」

 はい。伝統茶だけでなく、10センチほどにカットされた鹿の角も、袋につめて売られているのでした。「よ〜し日本に帰ったら、鹿の角煮てみるか!」韓国伝統茶でホッカホカになった身体で、お店をあとにしたのでした。

(2006年6月22日)

text by 龍玲花●プロフィール
東京都、荻窪生れ。韓国との第1種接近遭遇は、1997年サッカー韓国代表。以後、2000年から韓国映画が加わり現在は韓国映画とサッカー韓国代表との間をハートが往復する日々。「言葉は耳から覚える!」がモットーで、未だ読めるハングルは、選手名、チーム名、俳優名、映画のタイトルに食べ物…と偏りっぱなし。ミーハー体質のまま未来永劫突き進む所存也。

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